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2010年10月20日 (水)

寺山修司つながりのはなし

20代前半の頃、高田馬場駅前にあるたしか「宇宙館」というパチンコ

屋さんで遊んだ末に、その戦利品としてなぜか寺山修司の歌集を手にし

たことがあった。今考えるとパチンコの景品棚に本が並んでいたなん

て、さすが学生の街高田馬場だった。とにかくそこで初めて寺山修司に

遭遇し、彼の短歌をなぜかすんなり咀嚼できたことを今になって思い出

す。

現在高校の教科書にも載っているという寺山の代表的な短歌「マッチ擦

るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」(『空には本』

から)もこのときに読んでいたことになる。でも上京して間もない、み

るからに暗~い田舎もん(東北出身)の私には、望郷を謳ったものの方

がすんなりと胸に入ってきた。例えば「吸いさしの煙草で北を指すとき

の北暗ければ望郷ならず」(『田園に死す』から)とか「ふるさとの訛

りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし」(『初期歌篇』から)

などは、今改めてみるとベタな短歌だったかもしれないが当時の気分を

十分代弁してくれたように思う。

いっとき寺山の短歌は、他人の俳句を短歌にアレンジした剽窃であると

話題にもなったが、それで彼に対する評価が全て否定されることはない

のだろう。寺山修司が48歳で亡くなって、もう27年が過ぎた。気が

つけば私はその歳をとうに越えて五十路の半ばに達した。

実は先日治療中でのこと、中学3年の女の子とたまたま寺山修司の話に

なった。なんでも国語の教科書に寺山の『なんにでも値段をつける古道

具屋のおじさんの詩』が載っているというのだ。「へ~そうなんだ」と

感心しながら聞いてみると、そのときの授業がとても大切な時間を提供

してくれたと彼女は話してくれた。詩の最後に「では愛と涙はどちらが

高いの?」と問いかけて終わるところ、先生が「じゃあどっちが高いか

みんなでディスカッションしよう」と授業は展開していったそうだ。そ

こで彼女が絶対「涙」だよ!と熱く語ったところ、「なるほどそれはと

てもきみらしい」と褒めてくれたのだそうだ。その先生のひとことが、

自分という個性を全幅認めてくれた気がしてとてもうれしかった、と吐

露してくれた。彼女にも、寺山修司を通しての心に映るたしかな風景が

あったということだ。

治療中の何気ない会話でも、けっして無駄なものはないと思っている。

親子ほど離れた年齢差でもこうして寺山修司のはなしで盛り上がり、治

療院の空気はいっぺんに穏やかなものになる。いやなによりも、そんな

きこそきっといい気が流れて、鍼灸の効果がさらに倍増するような気

がしている。(安)

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